第5回 GFRG研究会公開シンポジウム 終了報告

第5回GFRG研究会シンポジウム

GFRG研究会第5回シンポジウム当番世話人
弘前大学大学院医学研究科泌尿器科学講座 大山 力教授のごあいさつ

 平成23年10月5日(水) 弘前大学において開催致しました「第5回GFRG研究会シンポジウム」において当番世話人を努めさせて頂きました、弘前大学泌尿器科の大山 力と申します。

  本研究会は、定量的グライコミクスのための方法論の標準化・規格化および、GFRGの概念の有効性を様々な生体試料を用いて評価することを目的として平成18年に設立されました。以前、私共は膀胱癌におけるN-glycanの発現とその臨床的意義を検討する研究に取り組んでおりました。その折、二次元糖鎖マップ法を用いた糖鎖構造の解析等をして頂いたことを契機に本研究会理事長 西村紳一郎先生との共同研究が始まりました。この手法は非常に分離能に優れ、他の方法に比べて高速であり、今でも有力な糖鎖の同定法として使われております。しかし、高速といっても1サンプルの解析に1週間以上掛かる為、当時は多数のサンプルの解析にはなかなか手が出せませんでした。そんな折、西村先生らのグループで、生体試料中の糖鎖を高感度・高分解能で捕捉回収出来るグライコブロッティング法、及び大量のサンプルを同時に処理出来る糖鎖前処理装置を開発している事を伺い、糖鎖研究に携わる臨床医として非常に興味深く見守っておりました。その後西村先生より本研究会をご紹介頂きました。

  今回のシンポジウムでは私が当番世話人を仰せつかり、弘前という東京と札幌以外の場所で初めて研究会シンポジウムを開催する運びとなりました。本学は、遠藤正彦学長率いる旧生化学第一講座がプロテオグリカンの研究において優れた業績を上げておりまして、糖鎖の研究も活発に行われているという背景がございます。

  開催にあたりましては「〜"For the Patient, Contribution of Glycobiology"〜」をテーマに掲げ、「今、目前にいる患者に糖鎖生物学は何をしてあげることができるのだろうか?」ということを念頭にプログラムを構成させて頂きました。福田穰先生の基調講演、中山淳先生の招待講演、3つの一般講演の他、16件のポスター発表を行うことが出来ました。約80名のご参加を頂きました。本会が盛況のうちに終了致しましたことに心から感謝申し上げます。

  私のバーナム研究所時代の恩師である福田先生の基調講演では、Fer tyrosine kinaseの発現低下がα-Distroglycanによる細胞接着を増加させ、その結果腫瘍形成が抑制されるという卓越した研究成果についてご講演頂きました。中山先生の招待講演では胃腺粘液に存在するαGlcNAcというユニークな糖鎖の胃がん発生における役割について非常に明快な研究成果を発表頂きました。柿崎先生の講演では、プロテオグリカンの糖鎖プロファイリングというチャレンジングな研究への取り組みを紹介頂き、現在抱えている問題について活発な議論が行われました。坪井先生の講演では、膀胱癌患者における癌細胞の免疫逃避とCore2GlcNAc転移酵素の高発現との関係性から新しい免疫逃避機構を明らかにしたという画期的な成果を発表頂きました。西村先生の講演では、グライコブロッティング法と、新しく開発された、長期的に安定で高性能な糖鎖提示ナノ微粒子とそのマウスにおけるイメージングの応用例という、我々臨床医にとっても非常に期待のできる技術のご紹介を頂きました。その他にもポスター発表や、各協賛企業の展示等でも活発な議論が見られ、非常に有意義なシンポジウムであったと自負しております。

  今回のシンポジウムでは、ご講演を賜った先生方の講演要旨及び講演資料、ならびにポスター発表の要旨をまとめた予稿集を作成致しました。残りの部数は少なくなりましたが、頒布を行うことが決定致しました。詳細はGFRG研究会ホームページ(http://www.gfrg.org/)をご覧ください。

  最後にシンポジウム開催にあたり、共催をして頂きました財団法人鷹揚郷腎研究所並びに出展・広告の掲載を頂きました協賛の各企業の関係者各位に心より感謝申し上げます。

プログラム

   
1.会長挨拶 14:00〜14:05
 会長・西村 紳一郎 教授 
 北海道大学大学院先端生命科学研究院
2.当番世話人挨拶 14:05〜14:10
 理事・大山 力 教授
 弘前大学大学院医学研究科
 泌尿器科学講座
3.来賓ご挨拶 14:10〜14:15
 遠藤 正彦 学長
 弘前大学
4.基調講演 14:15〜15:05
 福田 穰 教授
 Sanford-Burnham Institute 
 「Upregulation of α-dystroglycan-
 mediated cell adhesion and tumor
 suppression by down regulation of
 Fer tyrosine kinase signaling」
5.招待講演 15:05-15:45
 中山 淳 教授
 信州大学大学院医学系研究科
 分子病理学分野
  「胃癌発生における胃腺粘液糖鎖の役割」
6.コーヒーブレイク&
 ポスターディスカッション 15:45-16:30
 
7.講演 16:30-17:30
 柿崎 育子 准教授 
 弘前大学大学院医学研究科附属
 高度先進医学研究センター 糖鎖工学講座
  「プロテオグリカンの糖鎖プロファイリング
  へのアプローチ」
 坪井 滋 部長
 鷹揚郷腎研究所 生化学研究部
「細胞表面のO-glycanを利用した
 癌細胞の新しい免疫逃避機構」
 西村 紳一郎
 北海道大学大学院先端生命科学研究院・
 医化学創薬合同会社
「糖鎖医薬品の研究開発を支援する新技術・
 デバイス」

8.閉会挨拶 17:30〜17:35
 会長・西村 紳一郎
 北海道大学大学院先端生命科学研究院

9.懇親会 17:35〜19:00
(弘前大学コミュニケーションセンター内)